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2009.06.16

ソニー役員との対談 2

3.インターネットのインパクト

二つ目のインパクトとは、インターネットである。これがそれまでの音楽の流通経路を破壊してしまった。CD時代はメーカーと音楽業界の二つの主体がいて、両者はまさにWin-winだった。まずメーカーは音楽業界が納得するクオリティのプレーヤーを作る。そして、CDが売れればその結果としてプレーヤーも売れる。CDの販売収入は音楽業界を潤す。

ところが、iTunesのようなインターネット配信では、Win-winではない。まず、音楽業者はクオリティに不満である。配信業者は軽いほうがいいので音楽データを大幅に圧縮してしまう。また、PCのスピーカーも標準のものでは音楽業者はとうてい満足できない。この結果、日本ではメジャーな歌手はiTunesに楽曲提供をしていなかった。最近は徐々に変わりつつあるが。

現在、市場には音楽業界、メーカー、配信業者という3つのプレーヤーがいて、3者は消費者のお金をより多く取ろうと争っている。昔アーティストはCDで稼いでおり、コンサートはCDのプロモーションのためだったが、今は配信でプロモーションし、コンサートで稼ごうとしている。当然うまくいってない。かたや配信業者は我侭なアーティストをマネジメントすることもなく、出来上がったものを流すだけでお金をとろうと目論んでいる。業界のためにお金のかかる宣伝なぞしない。かといってメーカー、とくにソニーはこれまでのアーティストとの関係性があるため、評判の悪い配信業務の参入に踏み切れない。


4.グローバルビジネスと為替

なぜ日本のメーカーがこれほどまでにグローバル展開で成功したのか、ひとつの原因は間違いなく円安である。日本の工場でつくり、海外で安い値段で販売する。売れないはずが無い。

韓国メーカーの製品が売れているのもウォン安のおかげであろう。技術的水準はまだ日本の方が高いとおもうが、それを補って余りある価格競争力がある。現在の円高は深刻なマイナス影響要因だ。1ドル100円をきってくると、とても日本の工場で製品はつくれない。既にソニーは70%以上海外で製品を生産しているが、この数字は今後も高まっていく。


5.ソニーの経営課題

ソニーの最大の経営課題はテレビ事業である。音楽や映画などの他の事業はそこそこ黒字(ゲームは赤字だが)で、赤字の大部分はテレビである。欧米の会社であればとっくに部門を切り離しているとおもうが、それをするとソニーではなくなってしまう。

ソニーがかつてのような技術的な創意工夫の工場でなくなり、本社機能の肥大化と会社全体の官僚化が進んでいるという意見もある。ある程度真実であるが、既にソニーは7兆円の売り上げをあげる大会社であり、やむを得ない面もある。今後もその傾向は強まっていくかもしれない。企業規模は縮小はできないのだから。


お話で強く印象に残ったことは二つある。ひとつは、外部環境がいかにビジネスに大きな影響を与えるか、ということだ。我々が事業を語るときややもすると経営者の功罪に意識が集中しがち(『出井会長の失敗』など)だが、所詮それもひとつの経営要素に過ぎないということは忘れてはならない。無能な経営者でも環境がよければ業績は拡大する。

もう一つは、やはり参入障壁のある市場を創造し、デファクトスタンダードを獲得した者こそがもっとも大きな果実を得るということだ。OSマーケットを制覇したマイクロソフト然り、CDマーケットを席巻したソニー然り。

共通しているのは、両社とも単独で事業を行わず、他者とのアライアンス(明示的でないにせよ)を組んだことだ。マイクロソフトはIBMのベンダーとしてMS-DOSで成功をおさめ、ソニーはソフト業界と良好な関係を築きCDを売りさばいた。このような提携関係は競合の参入を阻む特権的な地位を与える。

色々と考えるきっかけの多い、有意義なお話でした。

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