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2010.01.28

続・日本のインターネット広告について思うこと

せっかくなので、前回の続きで普段考えていることをつらつらと。

よくいわれるように広告会社が『デジタル』分野に注力するといった場合に、サイト運営者として参入するのか、広告仲介業者として参入するのか、それ以外のサービス(コンサルティングやサイト制作など)で参入するのか、せめてその点に関する認識は必要でしょう。

まず、成功すれば高収益が実現できるのはなんといってもサイト運営です(『コンテンツ』という単語の方が一般的なのかもしれないですが)。言うまでもなくYahooが典型例になるでしょう。昔は電通がYahooにお願いされて枠を売っていたらしいのですが、前回のエントリーで申し上げたようにいまや最終利益はYahooの方がはるかに多いのです。

親しみのあるところでは、Mixiなんかも、利益面ではもはやばかにできないと思います。Mixiの当期純利は昨年度で既に20億円あまり。たぶんまだ成長の余地があるでしょうから、連結で合算できれば電通のような大手広告代理店にとってさえ、財務諸表上それなりのインパクトがあります。

「Mixiがかよ!20億円でかよ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、広告業界って知名度に比して事業規模って小さいんですよね。人員の面でも、売上や利益の面でもメーカーや金融なんかと比較になりません。もちろん世の中へのインパクトという点では事業規模以上のものがありますが。

さて、このサイト運営の分野はまだ新サービスがでてくる余地はあると思うのですが、面白いことにテレビ局や新聞社、大手広告代理店などの既存プレイヤーがこの分野に進出して成功した事例は寡聞にして知りません。ひとつの例として日テレのプレスリリースをみてみると、

「第2日本テレビが2回目の単月黒字を達成!
~インターネット動画業界で世界初の安定黒字達成に布石~」

2009年12月1日

という具合です。このプレスリリース、日テレサイドはポジティブなニュースのつもりで発表したと思うのですが、いかにも苦しい。かえって苦戦している様子がひしひしと伝わってきます。ちなみに僕は心情的には知り合いがいっぱいいる日テレを応援しています。

思うに、日テレのような立派な企業がここまで苦戦するのは、よっぽど既存映像コンテンツはネットとの親和性が低いということなのでしょう。僕も経験があるのですが、とくに映像コンテンツは権利を主張する人々がごまんといて本当に使いづらい。大体そもそもどこまでが権利者なのかがグレーなのです。番組制作時にワンショットの支払いでテレビ局が全ての権利を買いきれれば、色々とおもしろい展開ができると思うのですが。

たとえばイギリスのBBCでは「iPlayer」というサービスがあり、放送された番組がそのまま翌日ネットにアップされます。もちろん全てではないですが、人気番組はたいてい見られる。これは民間放送のITVも同様。BBCの場合はニュース番組に至ってはリアルタイム。イギリスより回線速度が格段に速い日本で同じことができないのは、宝の持ち腐れのような気がします。

話を日本に戻すと、有りモノの素材が使えない現状では、人々の耳目を引く革新的なサイト運営のノウハウが広告業界の既存プレイヤーにあるわけでもないので、逆に成功したら、そっちの方が不思議とさえいえるのかもしれません。

さて、残るは広告仲介業かその他のサービスということになりますが、これは前回のエントリーでも議論したように、そもそもこの業界自体は従前のままでは収益性が見込めないと思っています。つまり、この分野に参入するなら、業界の構造を変えるような方法論が必要なのです。

例えば、オンライン広告会社を大胆に買収して、間接部門を統合して低価格モデルを確立するとか、システム投資をして現在の低賃金労働(つまり若者)に頼っている労働集約サービス構造から脱却するとか・・・。

大手広告会社も1年に1件ぐらいのペースでネット専業の代理店などを買収していますが、間接部門を統合したりしてダウンサイジングするなどの改革を行ったとはあまり聞いたことがありません。買ったら買いっぱなしで放置というのは、最悪の買収戦略です。ちなみに、多くの場合「ノウハウの共有」というのはその後何もしないことが多い。

もし、経営陣が「だって仮に何もしなくても連結で利益に貢献するからいいじゃん。」と思っているなら、それは大きな間違いです。買収する側は買収する際に多大なコストを払っています。投資銀行に払う手数料、弁護士に払うリーガルコストなど直接的なコストに加えて、既存株主へのプレミアム。

通常買収株価は「将来稼ぐであろうお金の全合計値+α」となるため(そうでなければ既存株主が売らない)、買収する側は、買収した後に適切なマネジメントをして利益をおしあげなければ、通常その買収の最終損益はマイナスになります。

もちろんこの「将来稼ぐであろうお金」を既存株主が過小に見積もる場合もあり、その場合は、特に買収した会社にてこ入れをしなくても利益がでて”結果オーライ”となります。結果オーライをあてにするなら何も考える必要がないので大変楽なのですが、そういつもいつも運任せというわけにもいかない。

シナジー効果がない買収戦略は、評価損になって財務諸表に現われます。ということで、ここ最近、たいてい大手広告代理店の財務諸表には「株式評価損」「事業再編費」「棚卸資産評価損」などの特別損失が計上されております。毎年計上してたら”特別”ともいえませんが。

最後はまとまりに欠けてて恐縮です。そんなこんなで、僕はインターネット広告の業界に悲観的でも楽観的でもないのですが、既存プレイヤーにだって、思いつき買収の他にもやれることはあるだろうに、と歯がゆく思っている次第です。そういう仕事がやれたら楽しいのになぁ。

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