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2010.03.14

広告業界の”密約?”

冷戦下の核持込をめぐる日米政府の「密約」がニュースになっています。外務省の有識者委員会の報告書はやや冗長なのですが、要するに「日本政府は非核三原則を掲げておきながら、アメリカ軍の核兵器の持込を黙認していた」ということのようです。

さて、こういう『暗黙の合意』を密約とするならば、広告取引では担当者間の密約が横行?しているかもしれません。何かというと、CMの撮影費。一般的にCMの撮影費は、15秒/30秒のタイプを両方作って、1本2000万~4000万あたりが相場です。これにはタレントの契約費(年間数千万円)は含まれておりません。

CMの撮影が屋内、つまりスタジオでやるのであれば、制作見積もりの信頼性が高くなります。ところが、これが屋外ロケとなると、見積もり作成がとたんに難しくなります。雨が降って撮影が一日延びれば、それだけ拘束しているスタッフ(照明、美術、撮影クルー、メイク等)の人件費と、機材のレンタル費が積みあがっていきます。もちろん総制作費が倍になるわけではありませんが、単純に一日撮影が延びれば数百万単位で膨れ上がります。

もし僕が「いかなるリスクも避けたい」という人間であれば、雨天予備費を見積もり上目いっぱい積み上げるでしょう。たとえば「1日撮影+4日雨天予備」のような感じで。5日ぐらいあれば1日ぐらい晴れるだろうというのは、保険としてはまっとうな気がします。そして、清算時に実際にかかった金額のみを請求するでしょう。

ところが、こうすると当初見積もりが膨れ上がります。3000万円の見積もりが6000万円になってもおかしくありません。当然クライアント側の担当者は過去実績を参考にしますから、受け入れてもらえません。

「この見積もりは受け入れられない。」

「じゃあ、雨天予備費なしで、雨が降ったら追加分を請求させていただけるんですか?」

「いや、当初見積もりより過大に膨れ上がるような請求は駄目だ。見積もりの意味がない。」

「ごもっともで。ではやっぱり雨天予備を入れさせていただきたいのですが」

「でも、これはいくらなんでも高すぎるだろう?」

「といっても、雨が1日降れば撮影費は大体倍かかりますから、計算上はおかしくはないのですが」

「・・・、そこはうまくやってよ」

「・・・、はぁうまくですか」

という具合です。もちろん担当者が未熟で雨天リスクを見込んでない場合もありますが、上記の事情から敢えて雨天予備を全くいれないことも多々あります。もし、雨天予備を1日でも見込んだ見積もりが提出されて、クライアントもそれをしっかりと了承しているのであれば、かなりまっとうな取引といえるでしょう。

雨天予備費を見込まなくて、雨が降ったらどうするんでしょうか?その時はその時、そこには担当者間のお互い努力するという暗黙の合意が存在しているといえるでしょう。といっても、合意まで至れば広告営業担当としては立派なもので、クライアント側が「そんなことは知らん。とにかくこの見積もりを出したんだから、これしか払わない」ということも多いのですが。

多分似たようなことはいずれの業界でもあるでしょうが、個人的にはこういう不透明な日本的ビジネス慣行はよくないと思っています。たとえ数百~数千万円の幅が出ようとも、事実は事実なのですから広告会社もクライアントも書面で合意すべきだ、とは思います。もっとも、当時、一担当者としては業界慣習には逆らえなかったのですが。

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コメント

要するに客のゴネ得ってのはどこの業界にもあるのね。
SE業界でよくあるのは、バグが発見された時
「これはバグでしょ?」
「いや仕様書に書いてないので」
「仕様書のここをこう解釈するとバグでしょ?」
「へい」
みたいな感じ。

完全な欠陥だと分かる場合はいいんだけど、
「ディーラーが勝手にプリウスに
非純正のマットを取りつけた」みたいな
グレーなのだと、まー大体押し切られるんでしょうね。

投稿: tak | 2010.03.14 03時23分

おっしゃるとおり、結局どっちがリスクを負うかは、概してパワーバランスで決まっちゃうからなぁ。電通がオリンピック誘致活動で実質東京都に値引きを強要(表向きは貸付)されたのだって、お上には逆らえないからだしね。一番たちの悪いケースだな。もっとも、債権者公平の観点から言えば、電通だけにリスクを押し付けるのはおかしいのですが。ありゃ多分けっこうな赤字仕事だな。

ま、日々どこにでもあるこういうソフト面の対応をうまくこなし、双方に満足いく結果にもっていくのが、従業員の”質”というものかもしれないね。

投稿: Shuji | 2010.03.15 03時37分

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