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2010.09.17

本当に円高か?

タイトルをみた方から、「何を馬鹿なことをいっているんだ。1ドル80円台前半がどうして円高じゃないんだ」とご意見をいただきそうですが、今の日本の報道論調があまりにも”円高悪玉論”に偏っているので、改めて自分で考えるべきではないかと思いました。

まず、長期的な為替トレンドをみてみましょう(出所:日銀)。

Presentation1 

これは円-ドルのレートです。長期的には円高になっているようにみえます。とくに、直近5年ぐらいは。ただ、長期でみてみると1985年のプラザ合意の為替レートが激しく上昇しておりますが、ここ20年ぐらいはあんまり変ってないようにもみえます。

しかし、この名目レートでは物価変動が考慮されていませんので注意が必要です。たとえば、以下のような状況を想定してみましょう。日本が激しいデフレになり、全く同じ車の値段が

100万円⇒90万円⇒80万円⇒70万円

と毎年急激に下がっていったとします。この間もし名目為替レートが全く変らなかったらどうなるでしょうか?日本の車がバンバン値段が下がることになりますから、”実質的に円安”ともいえます。

もちろん実際にはこんなことは起こらなくて、物価変動に合わせて為替レートが変動し、調整が行われます。ここのポイントは、名目為替レートだけみても本当に円安か円高かは分からない、ということです。

ということで、日銀が実質為替レートというものを計算してくれていますので、そちらをみてみましょう。この実質為替レートは貿易量に応じて色々な国の通貨レートを加重平均し、インフレ率の差まで調整して指数化した優れものです。

Presentation2

どうでしょうか。この10年ぐらい、他の国はインフレでしたが日本はデフレだったので、名目為替レートがやや円高傾向にあるようにみえても、実質的には急激に円安にふれていたんですね(別の見方をすると失われた20年で日本の購買力が下がった)。

そういう視点でみてみると、確かにここ3年ぐらいで考えると円高です。景気動向などは短期的に判断されるものですから、巷の円高という実感は正しいでしょう。しかし、5年前の水準に戻ったともいえます。20年スパンでみると、まぁこんなもんじゃない?ともいえそうです。

結論としては、過剰な円高ではないと思います。このレベルでは各国との協調介入など望むべくもないでしょう。

最後に蛇足ですが、今回の為替介入は政治的パフォーマンスに過ぎず、実体経済にはほとんど影響を与えないのではないか、という個人的印象をぬぐえません。そもそも、長期的には為替レートはその国のファンディメンタルズ(基礎的条件⇒人口、技術レベル、自然条件等)で決定され、人為的に操作できるものではありません(国際協調と国内物価安定を無視している中国は例外)。

上記の図でみると、たとえば1995年頃のようにバブル経済の後遺症で明らかにファンディメンタルズと乖離した円高水準にある場合には介入も意味があるでしょうが、今回がそのケースかというと、そうではないと思います。

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コメント

いつも拝見させて頂いております。

日本国内での「円高悪玉論」は、Shujiさんのおっしゃる通りだと思います。日銀は実質ベースで議論しているみたいですが、政治家や世論(マスコミ?)はそうで無いですね。

この5年くらいは日本国内で高付加価値商品を作る傾向にあったとは思いますが、この為替水準が続くと、生産拠点の更なる国際化が進んで、日本国内の雇用環境が徐々に悪化していくやもしれませんね。

個人的には、失われた20年で経済のファンダメンタルが悪いにも関わらず、ある程度の円高水準で続いていることがおもしろいなぁと思っています。

投稿: tokensnet | 2010.09.19 05時36分

どうもありがとうございます。ここ20年の長期傾向で考えると実質では円安だと思いますので、日本の経済力低下とは整合的だと思います。

投稿: Shuji | 2010.09.19 08時39分

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