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2010.09.19

”円高対策”とは何か

さて、前回のエントリーでみてみたように僕は「各国の物価変動の差を考慮すると、現在が異常な円高とはいえない」と考えています。しかし、名目為替レートが円高にふれれば、輸出産業に打撃を与えるのは事実です。

では、日本政府は今何をすべきなのでしょうか?マスメディアは「円高対策を!景気対策を!」と声高に叫びますが、具体的に何をやればいいのかについては何も言いません。菅首相も「円高には断固たる措置」といっておりましたが、措置の内容はこれまた明らかではありません。もっとも彼らは専門の教育を受けているわけでもないので、そこまで求めるのは酷かもしれません。

僕も所詮は一介の学生なのであまり偉そうなことはいえませんが、敢えて言わせていただければ本質的な円高対策とは生産性を高めること、だと思うのです。

生産性が高い、とはいかなる状況でしょうか。具体例をあげると、他国で車を1台作るのに20人必要なところ、日本だと5人で済む。あるいは他国では車を1台を組み立てるのに1日かかるが日本だと1時間で済む。安価で良質なものが作れるということが、生産性が高いということです。

生産性が高ければ円高になっても価格を低く抑えることができ、価格競争力を維持できます。こうして獲得された価格競争力には、為替操作と違って諸外国も文句のつけようがありません(論理的には)。人類が数千年前に単純狩猟社会を脱したときから、生産性向上こそが本質的な富の源泉であり、それは現在でも変っていません。

そもそも歴史的にみれば為替相場を人為的に操作しようという試みは全て失敗してきました。戦前の金本位制度による固定レートしかり、1992年のジョージソロスに対するイギリス政府のポンド防衛しかり・・・。為替レートそのものを操作しようという意識は捨て去るべきかと思われます。

たとえが適切かは自信がないですが、「円高が問題だ」というのは、「猛暑が問題だ」といっているのと同種のような気がします。猛暑が問題なのは事実ですが、だからといって「じゃあ気温を下げよう」という発想にはならないはずです。通常は猛暑を所与として、かつては団扇をあおぎましたし、技術の進んだ今はクーラーを買うなりの対応を考えます。

円高も同じだと思うのです。円高は確かに輸出企業にとっては猛暑のようにつらい環境です。ですが、為替レートそのものを操作できないか、という発想はナンセンスだと思います。円高を所与としたときに何をすればいいのか、今はどのような投資が必要なのか、という発想の方が有意義でしょう。

では生産性を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。特別な方法はありませんので、当たり前のことをすればいいはずです。人的資源に投資(教育投資)をし、設備投資をして古い機械を更新します。適切な規制緩和を行って競争を促進し、JALのような非効率な企業は速やかに市場から退場していただきます。そうすれば生産性は高まっていくでしょう。

ということで、”市場の失敗に対応するための例外的な為替介入”は否定しませんが、日本政府も「所詮小手先の為替操作は意味がないし、そもそも不可能なのだ」と断言して、生産性の向上にまい進する、という方向にいってくれればなぁと思うのです。

一学生の繰言かもしれませんが、遠くイギリスでそんなことを考えました。

P.S.ちなみに猛暑になれば売上があがる産業があるように、円高になれば原油に代表される輸入品が安く購入でき、恩恵を受ける部分もあるのです。そう考えればますます”円高”を過剰に問題視すべきでないのではないか・・・、と思います。

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コメント

はじめまして、ブログのフォロワーです。
思ったことがありましたので、コメントさせてください。

為替がファンダメンタルに依存するというのは理解できますが、介入に意味がないというのは疑問があります。
日本の場合、"円安誘導"なので極論を言えば日銀がお札を刷ってしまえばいくらでも誘導は可能なんですよね(もちろん失敗したらハイパーインフレですが)。
それと、中国の場合は昔から為替介入が利益誘導だと問題となっています。

そんなわけで、今後も本気で取り組むのであれば円安介入は意味があると思います。

長期的には、円安のはずなのに歴史的な円高で製造業も打撃を受けているわけですが、どうすればいいんでしょうか。考えてもなかなか具体的な解は見つからないですね。

投稿: mac | 2010.09.20 23時58分

僕が意味がないと思う理由は、介入効果が長続きせず、結局元の木阿弥に戻ると考えているからです。

おっしゃるように”本気”で円を物理的に刷り続ければ円安効果が望めますが、「モノの量」が変らないのに「お金の量」だけが増え続ければおっしゃられたようにインフレになります。日本のマネタリーベースは100兆円なので、毎日2兆円不胎化介入すれば遠からずインフレになるではないでしょうか。

より直接的には為替操作国として国際的な信任も失い、報復措置(高関税等)の恐れもあります。

結局政府の人為的な操作に対する歪みは必ず矯正されますし、その際には多大なコストを払わなければなりません。
まとめると、

「永続性のないことはしないほうがよい。しても無駄だから。」

ということでしょうか。

投稿: Shuji | 2010.09.22 22時57分

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