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2010.11.02

原罪仮説が教えるもの

最近原罪仮説についてレポートを書いたので、そちらの内容を少々ご紹介します。といっても、もちろんアダムとイブの話ではありません。

舞台は1997年の東南アジア。いわゆるアジア通貨危機です。この年東南アジア諸国の通貨が大暴落しました。影響を受けた国は以下のとおりです。

Asian_financial_crisis_en20090505

そして、通貨の落ち込み幅は以下のとおり、まさに”暴落”と呼ぶにふさわしいものです。

CurrencyExchange rate
(per US$1)
Change
June 1997 July 1998
Thailand Thai baht 24.5 41 -40.2%
Indonesia Indonesian rupiah 2,380 14,150 -83.2%
Philippines Philippine peso 26.3 42 -37.4%
Malaysia Malaysian ringgit 2.5 4.1 -39.0%
South KoreaSouth Korean won 850 1,290 -34.1%

その後ほどなくして、経済学者たちは「なぜ新興国がこれほどまでに危機に脆いのか」を研究するようになり、そのひとつとして「原罪仮説」が唱えられました。

当時東南アジアは「奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を謳歌していました。成長するには投資が必要ですが、そのかなりの部分を「ドル建て」で先進国から借り入れていました。これが危機の「原罪」とされたのです。

ドルで借りる以上、ドルで返さなくてはなりません。当時はドルペッグ固定相場制(現在の中国と同じ)でしたから、本来であればリスクはないはずでした。が、新興国の通貨が過剰評価されていると考えた欧米のヘッジファンドは猛烈な売り浴びせを開始しました。

現地通貨はどんどん下がっていきます。現地企業は現地通貨で商売していますから、海外投資家からみると「あんたの持ってるお金の価値は俺達にとっては半分になった。倍のカネを用意しろ」という状況です。

状況を改善しようと思うと、通貨を防衛する必要があります。各国の中央銀行は利率を引き上げます(利子が多くつく通貨は魅力的になる)。タイに至っては一日の利子率が3000%にもなりました。しかし、このような異常金利はかえって通貨の信認を失わせ、資本の逃避が加速します。

一方で、現地企業は資金繰りが苦しいものの利子が高すぎてお金が借りられません。実態経済は悪化し、そしてそれが通貨の下落に拍車をかけていきます。まさに負のスパイラル。

結局各国は固定相場制を諦め、変動相場制に移行しました。IMFや日本が緊急融資を行うことによって、最終的に危機は収束していきます。

このように「何の通貨で借りるか」というのは非常に重要なファクターです。例えば日本は日露戦争のポンド建ての外債を1986年にようやく完済しました。ちなみに第二次世界大戦中はどこも日本に貸してくれなかったので円建ての国債を国内の投資家に買わせましたが、こちらはインフレという形で日本政府が実質踏み倒しています。

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(戦時国債宣伝パンフレット。当時の大蔵省の売り文句は「日本は内国債がほとんどで外国から借金をしているわけではないから大丈夫」だったそうです)

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