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2010.12.15

一票の価値について

最近政治ネタが続いてますが、ここ2週間ぐらいはそういうモードということで、ひとつお付き合いください。

さて、僕も法学部出身のはしくれとして「一票の価値の平等」ということにはそれなりに関心を払っています。「一票の価値」については、極端なケースを考えると分かりやすいと思います。「住民10人で1人国会議員が選出される選挙区」と「100万人で1人国会議員が選出される選挙区」があったとしたら、前者の住民の意見が10万倍国政に反映されやすくなるので、不公平だろうということです。

直近の参議院選挙だと神奈川県選挙区1,219,108 対 鳥取県選挙区243,783 で格差は5.00倍。この問題は長年放置されてきたのですが、やっぱりおかしいということで、心ある弁護士さんたちがいっせいに提訴し、東京高裁でも違憲判決が出ております。この運動については岩瀬さんが詳しくご紹介しているのでこちらこちらをご参照ください。

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前回間違って出雲大社(島根県)の写真をのせちゃいました。鳥取砂丘に差し替え。

例えば先の参院選の選挙区結果をみてみましょう。民主党は約2276万票で28席、自民党は約1950万票で39席。「民主党の方が得票数が多いのに、自民党の方が圧倒的に獲得議席数が多い」という逆転現象がおこっています。

菅原琢さんという東大の先生がこの問題についておもしろいことを書いていますので、ご紹介いたします。原文はこちら

ちょっと細かくて分かりにくい(万が一ご本人がご覧になられてたらすいません)と思いますので、簡単にポイントだけ紹介すると、この問題は「一票の価値の平等」もさることながら、「選挙区割り」の方がより大きな問題だと述べています。

参議院選挙の選挙区は都道府県単位になっています。最も少ない選挙区で議席は1(いわゆる1人区)ですからこれ以上少なくはできません。実は1人区の次点はほとんど民主党なのですが、現状ではこれらの票が全て死票になるんですね

単純に一人一票の価値の問題だけなら、東京や神奈川に議席数を足して、その分比例代表選出を減らしていけば、ある程度矯正されることになります。しかしそれではこの死票の問題は是正されず、よって得票数と議席数の乖離の問題も解消されないことになります。で、この先に関しては、菅原さんがとても理性的な主張を展開されておられますので、ブログよりそのまま引用します。

以上のように、得票と議席のねじれは、一部は定数不均衡により、大きくは小選挙区と中選挙区の混合によりもたらされていると考えられます。5倍超という「一票の格差」の印象ほど、定数不均衡を解消してもそれほど議席配分が変わらないのは、人口に比較して議席数の少ない選挙区で、より比例的な議席配分を行う中選挙区制が採用されているためです。自民党は小さな県の議席を独占し、大きな都道府県では一定の議席を獲得するという「仕組み」になっています。これは、自民党に参院選で常に勝利をもたらし、農村に過大な利益をもたらした、55年体制・自民党一党優位体制の基本構造そのものです。

ただし、民主党はこのおかしな選挙制度の被害者だとみなすのもまた、おかしいと考えます。このように選挙制度が歪んでいるのは最初からわかっていたことで、政権党としては過半数を獲得するために他党と協力する道を探るべきだったでしょう。『世界』の拙稿でも述べたように、中小政党との協力は、選挙での勝利と政権運営に不可欠なのですから。党の支持率が下がり、社民党が政権から離脱し、衆院に比べ都市選出の大政党に有利ではない参院選挙制度を前にして、単独で戦おうというのは、さすがに無理があったと言えるでしょう。

また、政権交代後、この参院の選挙制度や定数不均衡を積極的に修正しようという動きは見られませんでした。都市部の有権者が政権交代に託したのは、自民党長期政権がもたらしたさまざまな歪みを修正することであり、参院の選挙制度の歪みを修正することは、その期待に応える解のひとつになったはずです。政権交代後、そういった期待に応えずに、再び投票してくれというのは、政権交代に期待した有権者からすればおかしな話でしょう。

いずれにしろ、参院選挙制度がもたらす歪みが、今回の選挙の結果で明確になったのですから、この制度で得をしている自民党も含め、この修正に取り組むべきでしょう。もし自民党が、自分たちが得をしているからといって、都市部有権者に不利益をもたらす参院選挙制度の温存を図ろうとすれば、大変なことになるかもしれません。参院とは違って衆院の選挙は、都市部でも小選挙区であり、定数が多く配分されています。再び都市部の有権者にそっぽを向けられることになれば、次の衆院選で自民党は壊滅してしまうかもしれませんね。

一応両党の名誉のために申し上げておくと、報道によれば次回の参議院選挙で区割りを修正しようという意思は双方あるようです。ぜひ修正してほしいものです。

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