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2011.01.05

汚職の考え方

南仏旅行中は大体5時にどこの観光施設も閉まって、レストランは7時からあくので大体毎日1時間ぐらいカフェで本を読んだり、文章かいてたりしました。なので、大量の文章がアップされたわけですが。そのとき読んでた本がこれです。

412fwqgz1kl_bo2204203200_pisitbst_2Corruption and Government: Causes, Consequences, and Reform Susan Rose-Ackerman
(汚職と政府, 原因、結果と改善)

著者は「マダム・コラプション(汚職女史?)と呼ばれるほどのエール大学のこの分野の第一人者・・・だ、そうです。

日本だと「汚職⇒悪い⇒逮捕⇒制裁」という議論が中心で、その取締りプロセスの強化や制裁の妥当性などが議論になりますが、この本は汚職を違った捉え方をします。大変興味深く、汚職に限らず色々と応用できそうな考え方です。

まず、著者はなぜ汚職が起こるのか、ということに対してシンプルな不等式を提供します(原著に数式は一切出てきませんが)。

汚職によって得られる利益
>贈賄に伴うコスト(贈賄やギフトに必要なお金) + 発覚したときのコスト(懲役や罰金、社会的制裁など)×発覚する確率

左辺はいいですね。汚職によって得られる利益です。ただし、贈賄側も賄賂の元手が必要ですし、ばれた場合は罰金や社会的制裁を受けます。この二つを考慮して、それでも汚職によるメリットが大きい場合に、人は不正に走るということです。

もちろん、「俺はどんなに利益をもらっても汚職をしない!」という人は世の中に一杯いるでしょうけど、とりあえず世の中に汚職はありますし、多少の良心の呵責とお金で莫大な利益がえられるなら、それに抗うのは難しいというのが平均的な人間でしょう。著者は個々人の性格や文化や歴史といった精神的な要因よりも、もっと経済的な要因に注目するべきだと主張します。

発展途上国、とりわけアフリカで汚職が蔓延し先進国からの援助が効果を挙げていないようにみえる、としても別にそれはアフリカの人たちの”文化”ということを必ずしも意味しません。実際に汚職について意識調査をすると、問題視する人の方がマジョリティなのです。

そもそもなぜ「汚職によって利益を得られる」システムが存在するのでしょうか。実は、公的な役割を負っている人間が裁量権をもっているときに、例外なく汚職への誘引が発生します。自分の裁量によって、制度の利用者に利益誘導できるからです。

上記の不等式を仮定として受け入れると、汚職に対処する方法が二つあります。

1. 汚職を生むシステムそのものを変えてしまうか
2. 汚職を発見する確率と、発覚した場合の制裁を強化するか

日本の議論は後者の「発覚したときのコストをあげる」ということになりがちですが、監視や調査には人員と費用がかかります。もちろんこれもオプションのひとつですが、歴史上の事例をみると、より大きく効果をあげた方法は、汚職を誘発する原因そのものを失くしてしまうケースです。具体的な方法は、

・制度の撤廃
・民営化
・制度の改革
・行政機構の改革
・汚職防止法の改正
・調達方法の改善

たとえば元厚生労働省の村木さんの逮捕で有名になった、障害者向けの郵便料金割引制度ですが、そもそもこのお金を障害者向け団体の補助金とかに統合し、制度を無くしてしまえば、割引もへったくれもなく問題自体が発生しなくなります。監視の仕組みも必要ありません。これが制度の撤廃です。

また、どの先進国でも汚職が激しいのは中央よりも地方政府なのですが、たとえば調達担当の人員を中央から派遣し、エリアを越えてローテーションするなどすると、業者との癒着がおこりにくく、不正を行うことがより難しくなります。もちろん、この役人は多分「杓子定規で、温かみも無いお役所仕事」と評されるでしょうが、部署によってはその方がいいのです。これが行政機構の改革ないし調達方法の改善です。

ちなみに、「改革を装いながらより大きな不正を生むような動向」には注意が必要だと述べます。たとえば行政サービスを民営化し、適切な競争にさらせば、徐々に不正のインセンティブは喪失することが期待されます。一方でロシアにみられるように腐敗国家などでは、民営化が国家の富の収奪に使われるケースもあります。

昨年来日本(のマスコミ)は「政治とカネ」で盛り上がっていますが、そもそも莫大な選挙資金を必要とする制度そのものを改変するべきなのかな、と思いました。誰が新年会を開いたとかはベタ記事でいいので、同じ「政治とカネ」がテーマでも「そもそも金のかからない選挙はどうやったら達成可能なのか」という点からクオリティの高い議論にもっていけば、新聞の凋落傾向にも多少歯止めがかかるのではないでしょうか。僕はそんな新聞があったら間違いなく購読します。

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