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2011.01.24

国家が借金を踏み倒すとき

前回財政破綻を取り上げたので、ついでにこれにまつわるトリビア的なトピックを少し。人類の歴史で「金貸し」という職業が生まれたときに「借金を踏み倒す」という歴史も生まれました。国家も例外ではありません。

記録に残る国家のデフォルト(債務不履行)は紀元前4世紀、古代ギリシャでアテネ海運同盟の10都市国家がデロス寺院からの借金を返せなくなった事例までさかのぼります(Winkler 1933)。その後も定期的に国家は借金の支払いを拒んできました。最近もロシア(1998)、アルゼンチン(2001)、インドネシア(1999)など多くの事例があります。

ところで、国家が「借りてた金を返さない」といったときにどのような対抗手段があるのでしょうか?実質的には存在しないと言われています

例えばある銀行が国家にお金を貸していたにも関わらず、返済を拒まれたとします。このとき裁判を起こしたとします。もちろん勝ちます。裁判所は国家に命令します。「この申し立て人の権利は正当である、ただちに返済しなさい」そして国家はその命令を無視します。そしてそれ以上はどうしようもできません。

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アルゼンチンの経済危機(2001年)

アルゼンチンが2001年に債務不履行に陥ったとき、ある海外の銀行が税務署のオフィス道具一式の差し押さえを裁判所に訴えましたが、判決は「これらの資産は行政運営に必要不可欠なので、差し押さえできない」というものでした。アルゼンチンの金融危機では交渉に4年の歳月を費やし、投資家は債務残高の平均70%減額を受け入れざるをえませんでした。

では、はたして貸し手は泣き寝入りをするしかないのでしょうか。とりあえずは「もう貸してやらないぞ!」というプレッシャーをかけることはできますが、それはむしろ既存の借金を完済させるというよりも新しい債務契約に速やかに移行するためのものといえましょう。そして、通常国家の債務再編の過程では、投資家は30~40%の損失を被ります。

もちろん、「じゃあ国家は借金をするだけして、やばくなったら踏み倒せばいいじゃん」とはいえません。デフォルトが起こった場合、短期的には流動性がストップし、経済が収縮し、倒産が拡大、失業率は上昇、犯罪発生率も増加するなど負の効果が大きいからです。

投資家がそういうリスクがあるにも関わらず”危ない国家”に貸すのはなぜか?貸す際に高い利子率を要求するので、デフォルトを考慮してもなお儲かるからです。例えば20世紀の歴史をみると、新興国に投資をする場合と自国の債権に投資をする場合のリターンは最終的にはあまり変わりません(Sturzenegger and Zettelmeyer 2007)。数十年に一回のデフォルトをうまく避けられさえすれば、もちろん自国債権への投資よりも儲かります。

ちなみにアルゼンチンの子と話した時に面白かったのですが「アルゼンチン人は国や銀行を信用しないので常にいくばくかのタンス預金をもっている」ということでした。

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おまけ: そういえば一人一票運動で参議院選挙の無効を裁判所に訴えていますが、仮に裁判所が「参議院選挙は無効である」と審判したときに何がおこるんでしょうか。国会は無視するんでしょうか。それとも憲法に規定はありませんが、判決に従って参議院を解散するんでしょうか。でもそのまま選挙をやり直しても意味がないわけでして。裁判所が無効を宣言する確率は低いでしょうけど、思考実験としては面白いですね。

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