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2011.02.03

「100年安心プラン」の現在

予告どおり年金の話を少し。ちなみにこの原稿書いた後、もっと多くの人にこの問題を知ってもらいたいとおもって、リライトしてアゴラに投稿しました。

2004年の年金改革では、ときの厚生労働大臣が「100年安心プラン」と豪語して話題になりました。この言葉を信じた国民は皆無でしょうが、現状はどんなもんでしょうか。厚生労働省の資料(平成21年財政検証結果)によると・・・

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いくつか用語がわかりにくいと思いますので解説します。まず、「所得代替率」というのはこれは説明にあるように、現役世代の手取り(男)と年金額の比率です。50%の場合、仮に現役世代の平均手取りが40万円(大体日本人の平均)だったら、20万円受け取れるということです。

ちなみに「マクロ経済スライド」というのは「支給額カット」の別名です。つまり、2038年まで段階的に支給額をカットすることになっています。こうしてみると、現役世代の50%はもらえることになっており、「それならなんとかなるか」という気がしないわけでもありません(単身者はどうすんだという深刻な問題はありますが)。が、問題は計算の前提です

1)出生率

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出生率は2005年の実績を前提にしており、これは妥当だと思います。過去の厚生労働省の試算が修正につぐ修正を重ねたのは「出生率が急回復する」という前提に基づいており批判を浴びたので、さすがに懲りたのでしょう。

2)労働力率

平成20年4月にとりまとめられた「新雇用戦略」やその後の雇用政策の推進等によって実現すると仮定される状況を想定して、独立行政法人労働政策研究・研修機構「労 給の推計(平成20年3月)」における「労働力需働市場への参加が進むケース」に準拠して設定

はやくもここら辺から怪しくなってきます。推計のもととなったデータはこちらですが、この前提はこちら。

ケース C
(各種の雇用施策を講ずることにより、若者、女性、高齢者等の方の労働市場への参入が進むケース)

① 保育所幼稚園在所児童比率がケース B に比べ 2 倍の伸びとなる。
② 短時間勤務制度など普及により継続就業率が向上する。
③ 男性の家事分担割合が上昇する。
④ 短時間雇用者比率が高まり、平均労働時間も短縮する。
⑤ 男女間賃金格差が 2030 年までに解消する

すごい、すごすぎる。ちなみにその他のケースはこんな感じです。

ケース A
(性、年齢別の労働力率が現在(2006 年)と同じ水準で推移すると仮定したケース)
現在(2006 年)の性、年齢別の労働力率(女性に関しては有配偶、無配偶別)及び失業率に対して、将来推計の人口を当てはめたケース。

ケース B
(各種の雇用施策を講ずることにより、若者、女性、高齢者等の方の労働市場への参入が一定程度進むケース)

① 年齢間賃金格差は一定程度解消することにより、若年者の労働市場への進出が進む。
②  65 歳まで雇用が確保される割合が 2030 年には 95%の企業割合まで高まり、高齢者の働く環境が整う。
③ 保育所幼稚園在所児童比率が一定程度増加し、女性の就業環境が整う。

出生率と同じようにケースAをベースに使うべきでしょうね。

3)経済前提

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これも推計に使われている数字(中位ケース)が実態と乖離してます。2000-2009年の実績でいうと、物価上昇率は-1.9%(統計局:消費者物価指数)、賃金上昇率も-0.72%、運用利回りは1.77%です(こちら)。

さすがにこの数字をそのまま使うのは少し悲観的すぎるような気もします。それでも実績を踏まえればせめて経済低位ケースを使うべきでしょう。

4)その他の試算結果

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このほかにも国民年金の納付率を80%と仮定(2009年で60%以下)していたり、あまりに楽観的な前提が多いです。以上の議論を踏まえると、この推計結果をさらに割り引いた方がいいでしょう。現在の制度は「5年後に代替率が50%未満」になると見込まれる場合に見直されることになっています。もう既存制度が崩壊するのは火を見るより明らかだと思うのですが。

ちなみにこのままいくと、僕が年金もらえるころ(2050年ごろ?)は多分所得代替率40%以下ぐらいに下がるのかなぁ、という気がます。平均手取りが40万円だったら、奥さんがいたとしてもらえるのは12~16万円ぐらい。うーん、これで夫婦二人はきびしい。「100年安心プラン」10年もたってないのに不安でたまらないんですけど。

それにしてもいい加減な推計ですね。ほんとに全くもう・・・。僕も推計モデルをつくる仕事をやったことがあるのでよくわかるのですが、素人の僕でも指摘できるような「おかしさ」は担当者は言われるまでも無く100%認識しているはずです。それでもこんなことになっちゃうのは、担当者に良心が欠けているのか、上司に良心が欠けているのか、はたまた政治家に良心が欠けているのか。最も欠けているのは現実に向き合う勇気かもしれませんね。

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おまけ:

2004年の年金制度の改革は給付金額をおさえようとしたり努力のあとがみられないわけではないと思います。そもそも崩壊している制度のメンテナンスをさせられている厚生労働省を責めるのは酷かなと思ったり思わなかったり。スジ論では政治家が責めを負うべきでしょう。

それにしても年金制度ってわかりくいですね。「所得代替率」なんてへんてこりんな目標指標はやめたほうがいいと思います。この指標は現役世代の所得が変われば変わっちゃいますし、いまどき「老夫婦二人」をモデルにするのもねぇ。もはや時代も変わってきたので単純に「一人○○万円受け取れる」という計算の方が国民にとっても分かりやすいと思います。

それにしても改めて読み返してみると、この内容はなんかコンサルっぽいですね・・・。

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コメント

100年安心プランを信じた国民は皆無でもないと思います。今なお公明党支持している760万人はすっかり信じてしまったようです。信仰だからですかねえ。

投稿: 1年心配プラン | 2011.12.26 17時32分

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