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2011.03.27

自然災害が経済に与える影響 (3)

今回が最後ですが、先日(3月23日)内閣府が発表した、震災による経済損失を推計した資料(PDF)について考えてみたいと思います。

3) 東日本大震災のケース

まず日経が以下のように報道しています。

震災被害16兆~25兆円 GDP最大0.5%押し下げ
日本経済新聞 2011/3/23 20:29

内閣府は23日、東日本大震災による道路や住宅などへの直接的な被害額が16兆~25兆円になるとの試算を公表した。政府が被害額を示すのは初めてで、阪神大震災時の約10兆円を大きく上回ると判断した。地震や津波で生産設備などが損壊したため、内閣府は2011年度の実質国内総生産(GDP)が0.2~0.5%程度押し下げられるとみている。ただ福島第1原子力発電所の事故による計画停電の影響などは織り込んでおらず、経済的な影響はさらに大きくなる可能性がある。

個人的にはTwitterでつぶやいた後にこの記事見たので「あれ、なんか表を見間違えたのか?」とあせりました。内閣府の原資料ではGDPへの影響はプラスだったからです。表が読みにくかったので・・・。

というわけで原資料はおいといて(でも原資料に当たるのは大切です!)、僕の理解しているのは以下のとおりです。

A. 直接被害額の推定

そもそもこの16兆円とか25兆円とかの損失額をどうやって推定しているかという話ですが、内閣府では岩手・宮城・福島の3県を「津波被害エリア」と「非津波被害エリア」に分け、北海道、青森、千葉、茨木を「その他」に分けています。

A-1 津波被害エリア

 資本量(建物や工場、道路など) ☓ 阪神大震災の2倍の損壊率
 ※最大被害額はさらに上乗せした損壊率

A-2 非津波被害エリア

 資本量 ☓ 阪神大震災の損壊率

A-3 その他

 資本量 ☓ 震度に応じた損壊率

こうして被害額を推定しています。なお、このように荒い仮定をおいてざっくりと推定することをフェルミ推定といい、外資のコンサルなどでは入社試験に使われます。個人的には妥当な仮定ではないかと思います。余談ですが、官庁の推計は省益で前提がねじ曲がっていることが多いのですが内閣府は中立的なのでわりかし信頼できる印象があります。

225pxenrico_fermi_194349 閑話休題:エンリコ・フェルミ(偉い物理学者)

B. GDP損失の推定

こちらも同じように推定を行っています。

 - 民間資本の毀損率 ☓ 資本係数?
 ※ここの説明があっさりしてまして僕の知識も不十分なのでいまいち自信がありません

 - 他地域への波及効果

 + 復興需要

民間の工場とかが壊れれば、それに応じて生産数が減るでしょう、東北地方から部品供給などがなされなければ、他地域の生産もそれに応じてまた減るでしょう、ということです。復興需要は阪神大震災と同じように3年で被害額と同等の資本投資が行われていると仮定しています。

これらを足し合わせると、0.75%~1.5%程度GDPの成長率を押し上げると推定されています。なお、これが必ずしもいいことではないということは前回のエントリーをご参照ください。

もうひとつ、節電による経済活動のマイナス影響に対してはまだ状況がよくわからないので内閣府は推定を行っていないということです。参考値として民間のシンクタンク(証券会社とか)では、GDPで0.3-0.5%のマイナスと推計しているところもあります。


4)まとめ

今回色々調べてみて改めて思ったのは、経済活動において最も大切なのは紛れもなく人的資本です。建物は壊れても立て直せばよいのです。もちろん被災者の経済的な負担は大変なものがありますが、物理的な設備の回復は日本の経済力をもってすれば比較的早期に為されるでしょう。

もうひとつは予見されている危険に対する備えです。今回の原発事故では、従前から指摘されていた危険性に対して適切な対策をとっていたのかについて疑問が示されています。もちろんこれは原発に限った話ではありません。僕はほぼ東京で育ったので申し上げたいのですが、例えば東京の下町には耐震性の低い木造住宅が密集して残っておりその危険性は長年指摘され続けていますが、私有権の壁があり対策はなかなか進んでいません。

失われた数万の命は戻りませんが、今回の被害を教訓にすれば将来の数十万の命を救うことができるでしょう。過去は変えられませんが、未来は変えられます。残念ながら個々人が自発的に最適なリスク回避行動をとることは必ずしも期待できません。政策決定者各位には今回の災害を教訓として、防災対策を今一度見直すことを要望致します。それが皆さんの周囲の方々を守ることにつながります。

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2011.03.26

自然災害が経済に与える影響 (2)

前回のところで、自然災害は物理的な設備や人命を損なうものの同時に復興需要を誘引する。ということ取り上げました。当然これは国の経済力によって結論が異なります。ということで、日本のケース、阪神・淡路大震災についてみてみましょう。

2)阪神・淡路大震災のケース

兵庫県が震災の影響について丁寧にレポートしていますので、そちらから抜粋します。まず、地震のあとの生産量の推移は以下のとおりです。

Graph

被災地と兵庫県全体では日本全体よりも高い生産性の伸びを示しています。直ちに行われた復興対策が震災による破壊を大幅に上回ったからです。ところが、復興需要が一段落すると急激にGDPも落ち込んでいることがわかります。

もうひとつ、建設業などの影響を除くために鉱工業生産指数(製造業)をみてみましょう。

Graph2

さすがに震災後一時的に落ち込みましたが、その影響は1~2年程ですぐに元のレベルに回復したことがわかります。ちなみに不況のほうが経済に対するダメージははるかに大きいですね。この急激な復興については、Horwich (2000) が以下のように述べています。

「全てではないにせよ、多くのメディアでは復興には10年の歳月がいるだろうと言われた。しかし、15ヶ月も立たないうちに神戸周辺の製造業の生産は震災前の98%にまで回復し、18ヶ月目にはデパートの79%が営業を再開している。このときの震災前との売上比は76%である。1年後、港湾施設の半分がまだ使用できなかったが、輸入量は同等レベルまで回復し、輸出量は85%にまで上昇した。(略)2年後には全ての瓦礫が街中から取り除かれた。これは驚くべき成果だ。」

国でも自治体レベルでも復興計画が作られ、3年で震災で毀損した設備と同等量が回復されました。

Kobe2
クリックすると拡大します

なお、誤解をしていただきたくないので2点指摘しておきます。

ひとつは公的支援によって全ての損失が賄われたわけではないということです。「震災後の暮らしの変化から見た消費構造についての調査」(兵庫県 1997)によれば、世帯の80.3%が震災によって余計に必要となった費用があったと答えており、33.9%が震災後に所得が減少したと答えています。兵庫県の地震保険の加入率はわずか3%でした(山口 1999)。被災した多くの家庭は貯蓄を取り崩すか、消費を切り詰めることによって対応しています。

もうひとつ、この復興需要の恩恵は一律にもたらされたわけではありません。建設業は特需に沸いたかもしれませんが、サービス業は消費の落ち込みで深刻な打撃を受けたことでしょう。経営基盤の弱い中小企業は資金繰りが苦しくなればすぐに倒産です。不況でも震災でもそうですが、このような逆境に苦しむのは経済力の弱い人達からです

もちろん全てが元通りというわけにはいかず、震災の影響がひどかった地域では今も人口が震災前のレベルには回復しておりません。これは、元々被害の大きかった地域にはお年寄りが多く戦前からの木造住宅も多かったため、震災をきっかけに若年層が流出した結果ではないかといわれています。

Table1
クリックすると拡大します

今回の東日本地震の考察ですが、3月23日に発表された政府の推計はこの阪神大震災のケースをベースにしています。次回はこの資料について考えてみたいと思います。

(続く)

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2011.03.25

自然災害が経済に与える影響 (1)

震災関連のチャリティ活動も落ち着いてきて、イギリスのニュースからも段々と日本関連のものが少なくなっていきました。僕の生活も日常に戻りつつあります。

で、経済のレポートの宿題があったので今回の震災が経済に与えるインパクトについて調べてみることにしました。既存の論文についてはeliyaさんが紹介していたこちらのレポート(Cavallo, E. & Noy, I. " The Economics of Natural Disasters )によくまとまっています。

1)一般的なケース

まず、自然災害は物的資本(建物や工場)、さらに人的資本を破壊します。ここに争いはありません。しかし、よく経済力の指標として使われるGDPは平たく言えば「生産量」です。自然災害は「生産量」にどのような影響をあたえるのでしょうか?

ベーシックな成長会計の考え方では、生産を変化させる3つの要素を想定します。資本量、労働量、TFP(その他生産に影響を与える要素)です。自然災害に見舞われた場合、このうち直接的な被害として資本量と労働量のインプットがマイナスになります。さらに、通常の生産体制が組めないわけですからTFPも恐らく下がるでしょう。分かりやすく言うと、工場が無くなって、人が死んだらそれは生産量は下がるでしょう、ということです。

しかし、被害を受けた国にそれなりの経済力があれば、直ちに復興工事がはじまります。つまり、資本量のインプットがプラス方向に転じ、これは当然GDP成長を押し上げます。

S50_pho_big_01
(阪神大震災復興工事)

GDPへの影響はこのプラスとマイナスの合計で考えることが必要です。

ということで、上記のレポートでは「自然災害はGDP成長にプラス効果となる」「小さい災害はGDPにプラスの効果を与えるが、大きな災害はマイナス」「その国の識字率や技術レベル、経済規模によって変わってくる」などの色々な議論が紹介されています。しかし、一応まとめとしては「短期的かつ平均的には自然災害は経済成長にマイナスの効果」というのが概ねのコンセンサスのようです。

では、長期的(5年以上)にもなんらかの影響が残るのでしょうか。当然ながらこれはさらに推計が難しくなり、「シュンペーターの言う『創造的破壊』がおこり経済成長を押し上げる」(=古い制度や設備が更新されるのでプラス)というものもあります。「短期的にも長期的にも自然災害の影響は常にマイナスである」というものもありますし、「長期的には何ら影響を与えない」というものもあります。例のレポートの結論は、どういう因子と過程で影響があるのかよくわからないのでさらなる研究が必要、ということでした。

以上は世界中の自然災害の事例を集めて分析したものです。では、日本のケースではどうなるのでしょうか。

(続く)

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2011.03.19

仙台にいるメキシコ人からの手紙

クラスの親友より(転載許可あり)。

Date: March 13, 2011 3:55:14 AM EDT
Subject: Blessings

Hello My Lovely Family and Friends,

First I want to thank you so very much for your concern for me. I am
very touched. I also wish to apologize for a generic message to you
all. But it seems the best way at the moment to get my message to you.

Things here in Sendai have been rather surreal. But I am very blessed
to have wonderful friends who are helping me a lot. Since my shack is
even more worthy of that name, I am now staying at a friend's home. We
share supplies like water, food and a kerosene heater. We sleep lined
up in one room, eat by candlelight, share stories. It is warm,
friendly, and beautiful.

During the day we help each other clean up the mess in our homes.
People sit in their cars, looking at news on their navigation screens,
or line up to get drinking water when a source is open. If someone has
water running in their home, they put out sign so people can come to
fill up their jugs and buckets.

Utterly amazingly where I am there has been no looting, no pushing in
lines. People leave their front door open, as it is safer when an
earthquake strikes. People keep saying, "Oh, this is how it used to be
in the old days when everyone helped one another."

Quakes keep coming. Last night they struck about every 15 minutes.
Sirens are constant and helicopters pass overhead often.

We got water for a few hours in our homes last night, and now it is
for half a day. Electricity came on this afternoon. Gas has not yet
come on. But all of this is by area. Some people have these things,
others do not. No one has washed for several days. We feel grubby, but
there are so much more important concerns than that for us now. I love
this peeling away of non-essentials. Living fully on the level of
instinct, of intuition, of caring, of what is needed for survival, not
just of me, but of the entire group.

There are strange parallel universes happening. Houses a mess in some
places, yet then a house with futons or laundry out drying in the sun.
People lining up for water and food, and yet a few people out walking
their dogs. All happening at the same time.

Other unexpected touches of beauty are first, the silence at night. No
cars. No one out on the streets. And the heavens at night are
scattered with stars. I usually can see about two, but now the whole
sky is filled. The mountains are Sendai are solid and with the crisp
air we can see them silhouetted against the sky magnificently.

And the Japanese themselves are so wonderful. I come back to my shack
to check on it each day, now to send this e-mail since the electricity
is on, and I find food and water left in my entranceway. I have no
idea from whom, but it is there. Old men in green hats go from door to
door checking to see if everyone is OK. People talk to complete
strangers asking if they need help. I see no signs of fear.
Resignation, yes, but fear or panic, no.

They tell us we can expect aftershocks, and even other major quakes,
for another month or more. And we are getting constant tremors, rolls,
shaking, rumbling. I am blessed in that I live in a part of Sendai
that is a bit elevated, a bit more solid than other parts. So, so far
this area is better off than others. Last night my friend's husband
came in from the country, bringing food and water. Blessed again.

Somehow at this time I realize from direct experience that there is
indeed an enormous Cosmic evolutionary step that is occurring all over
the world right at this moment. And somehow as I experience the events
happening now in Japan, I can feel my heart opening very wide. My
brother asked me if I felt so small because of all that is happening.
I don't. Rather, I feel as part of something happening that much
larger than myself. This wave of birthing (worldwide) is hard, and yet
magnificent.

Thank you again for your care and Love of me,

With Love in return, to you all,
Anne

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2011.03.13

ロンドンビジネススクールでの義捐金活動

東日本大震災を受けて、ロンドンビジネススクールのジャパンクラブでは英国の各大学院と連携して義捐金を募る活動を開始しました。サイトはこちら

Jerf

本校のシステムはLondon Business School以外でも利用可能です(振込先はLBSの口座になります)。イギリスの留学生で「義捐金活動を始めたいけど、Webから入金できるシステムが欲しい」という方はご連絡ください。

LBS Class of 2011 根津

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2011.03.12

英国内での寄付活動について

まず、日本で今回の地震により被害にあわれた方々に心からお悔やみ申しあげます。

ただいまロンドンビジネススクールの日本人学生で、義捐金募集活動の準備をしております。この活動にはロンドンビジネススクール以外にも複数の学校が参加する予定です。

ただいま活動準備中で、明日からスタートする予定です。「自分の大学でも募金活動を始めたいけど、オペレーションをどうしたらいいのか分からない」という英国の学生の方はご連絡ください(コメント欄に書きこんでください)。

London Business School
MBA class of 2011

根津

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2011.03.09

コモディティの話

間があいてしまってすいません。レポートいっぱい書かなきゃなりませんでしたので・・・。ちなみにまだ全然終わってません(泣)。

さて、最近Twitterで激烈話題沸騰中のコモデティ(基本的に食料や資源などの一次産品)の価格上昇ですが、先学期に習ったことを忘れないうちにまとめてみたいと思います。それほど経済に詳しくない方でも、

  • 新興国(とりわけ中国)が食料や資源を買いあさっている
  • 先進国で金融緩和した結果、投機資金がコモデティに流れている

という話はどこかでお聞きになられたことがあるのでしょうか。今回はここら辺についてひとつ考える材料をご提供できればと思っています。

China_buys_up_the_world
ネットで見つけたインパクトのある写真

1.コモデティの長期価格推移

まずはともあれ、鉱物と食料の長期的な推移をみてみましょう。

Graph_2
出所:IMF、OECD

ということで、これだけ人口が増え経済が発展したにも関わらず、実質値でのコモデティ価格は長期的に下落傾向にありました。確かに最近急激に価格があがっておりますが、それでもまだ20年前と同じ程度なんですね。

なぜ人口が急激に増え、生産量も拡大しているのに価格が下がったのか。

  1. 生産技術の向上:
    鉱物であれば採掘技術、農業であれば化学肥料や灌漑技術など
  2. 原油価格の低位安定:
    採掘や化学肥料などの関係で原油価格が影響してくる

が考えられます。特に1973年のオイルショックのところで価格が跳ね上がっているところをみますと、かなり石油価格の影響をうけるものなんですね。最近も原油価格が急上昇してますから、コモデティの価格があがるのも無理はないかと。


2.投機マネーと在庫

次にこれらのコモデティの在庫がどうなっているかみてみましょう。

Graph2

もし、投機マネーで不自然に値段がつり上がっていたとすれば在庫がだぶつくはずですが、2007年と2008年に急激に価格があがったときにはそういう傾向はみられませんでした。とすると、やはり実需に基づく価格上昇ではなかったかと考えられます。直近の話もしたかったんですが、データが見つかりませんでした。


3.常に多角的な視点

これはこのブログでいつも強調していますが、実際の社会ではひとつの現象(例えばコモデティの価格上昇)に対して大抵の場合、複数要因が絡んでいます。物事は常に多角的にみることが大事です。

価格の基本は需要と供給のバランスです。確かに新興国で旺盛な需要があれば価格はあがりますが、むしろ供給側の都合によって価格が変動することもあります。コモデティに関して言えば歴史的に見るとサプライサイドの影響の方が大きかったともいえます。

また、為替レートの影響も見逃せません。通常コモデティ価格はドル表示のため、単純にドル安になれば価格はあがりますし、ドル高になれば価格は下がります。

さらに、コモデティの価格は元来非常に不安定です。短期的に上がったり下がったりしても、その原因は不明なことが多いということも忘れてはいけないと思います。

投機マネーに関しては、概してその影響が過大評価される傾向があり、新聞では「先進国の余剰資金が流れ込んでいる」がお決まりの文句になってます。確かに不動産バブルなど実需と離れた値段がつくこともありますが、まずは実体経済の影響を調べて、それでも説明がつかない場合に投機の影響を考えるべきでしょう。

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2011.03.02

みんなの党の予算案

先日Twitterでのやりとりからふと興味がわいたので、みんなの党の予算案をみてみることにしました。

みんなの党、予算修正案まとめる
行革で歳出大幅カット 2011.2.25 19:15(産経)

みんなの党は25日、子ども手当廃止や国会議員と公務員の人件費削減などで歳出を大幅にカットした平成23年度予算案と予算関連法案の修正案を発表した。政府案が一般会計総額92兆4千億円に対し59兆8千億円の緊縮予算で、国債発行額も政府案の44兆3千億円に対し17兆7千億円に縮減した。現行40%の法人税率を20%まで引き下げて経済成長を目指す。

Agenda2010_2

さっきGoogleで検索したら産経しかとりあげてなかったので(見逃しているかもしれませんが)、やはり大手メディアはまともに取り合ってないのかなぁという気もします。が、僕自身はこの予算案をみて勉強になった部分もあるので、気づいたことをつらつらと書いてみたいと思います。

まず法人税の減税(3.7兆円)+公債費減額(25.2兆円)で歳入が30兆円近く減るわけですが、その分の歳出も減らすというのは信じがたい話。どうやって帳尻合わせをしているかというと、、、

1.資産売却(8.5兆円)

2.民主党政策の廃止(4.9兆円)

3.経費削減(9.8兆円)
 -人件費の2割カット(2.3兆円)
 -経費カット(4.2兆円)
 -歳入庁創設による歳入増(3兆円)

4.定率繰入の停止(9.8兆円)

大枠の議論をしたいので、細かい費目の付け替えは取り上げません。

1)資産売却収入

一見して分かるのは資産売却収入は一回こっきりということです。8.5兆円の収入は翌年増税で賄うのでしょうか。それが悪いわけではありませんが。

2)人件費削減のインパクト

もうひとつ面白いのが人件費を2割もカットしてもせいぜい搾り出せるのは2兆円ちょっとにすぎないということです(公務員人件費の総額が27.6兆※1なので控えめな数字ですが)。

2)経費カットは費目が大事

人件費よりも大きなインパクトを与えるのは「補助費のカット」という4兆円ですが、この内容が明らかではありません。これは我々が民主党で学んだことですが、費目の明らかでない「歳出カット」ほど信用ならないものはありません。

3)収入増の根拠

歳入庁創設による3兆円の増収は不思議な数字です。仮に未納問題が完璧に解決したとしても国民年金勘定の保険料収入は1.7兆円(未納率4割)※2なので、最大限1.1兆円しか増えないと思うのですが・・・。他になんかあるんですかね?年金会計は複雑なのであまり自信がありません。

4)定率繰入停止とは

この費目の削減が10兆円近くあってインパクトが大きいです。国債はいきなりドカンと元本償還が来ないようにちまちま借り換えしつつ元本を返していますが、それをしばらくやめるということです。そうするともちろんその期の支出は減りますが、将来償却期間が来たら先送りした分をまとめて返さなければなりません。

つまり「借りるのをやめる」代わり「返すのもやめる」と言っているだけであり、金利状況にもよりますが公債発行残高の減額という趣旨からは本質的に意味は有りません。「こつこつ返していく」という決まっていたルールを政治的パフォーマンスで歪めるのはあまり好ましいとは思えませんね。まるでみんなの党がすごいことをやって国債残高が減ったかのような誤解を与えます。


そんなわけで怪しさで言えば民主党のマニュフェストといい勝負(むしろ金額がでかい分勝ってる)というのが個人的評価です。少なくとも資産売却分に関しては翌年からの恒久財源を明示すべきでしょう。定率繰入の停止はそれほど意味がありません。これだけで計画の3分の2が吹っ飛んでしまいます。

個人的には財政再建は増税と(実質的な)歳出削減で達成すべきものと考えています。制度設計をひとつひとつ修正して負担増をお願いする地道な作業でしょうが、それ以外に道はないと思います。

財務官僚諸氏は匿名でいいのでフォローよろしく、、、つっても反応無いだろうな。

※1 財務省資料より(PDF)
※2 
厚生労働省HP 納付率(PDF)

追記:

友人より「3.5兆円もの株式売却や国有資産の大量売却を1年間でやったら市場を崩壊させるのでは」という指摘がありました。そりゃそうかも。市況にもよりますが。

なお、本文ではふれてませんが、たとえば20兆円もの歳出削減を行ったら名目GDPの4%分以上のマイナスですから、多分けっこうな不況になり失業率もあがるでしょうね。

ついでに言えば、僕も財政再建はすべきだと思いますが、まず時間をかけることと(最低でも5年以上の計画)、社会保障制度の改革が不可避だと思います。

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