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2011.03.26

自然災害が経済に与える影響 (2)

前回のところで、自然災害は物理的な設備や人命を損なうものの同時に復興需要を誘引する。ということ取り上げました。当然これは国の経済力によって結論が異なります。ということで、日本のケース、阪神・淡路大震災についてみてみましょう。

2)阪神・淡路大震災のケース

兵庫県が震災の影響について丁寧にレポートしていますので、そちらから抜粋します。まず、地震のあとの生産量の推移は以下のとおりです。

Graph

被災地と兵庫県全体では日本全体よりも高い生産性の伸びを示しています。直ちに行われた復興対策が震災による破壊を大幅に上回ったからです。ところが、復興需要が一段落すると急激にGDPも落ち込んでいることがわかります。

もうひとつ、建設業などの影響を除くために鉱工業生産指数(製造業)をみてみましょう。

Graph2

さすがに震災後一時的に落ち込みましたが、その影響は1~2年程ですぐに元のレベルに回復したことがわかります。ちなみに不況のほうが経済に対するダメージははるかに大きいですね。この急激な復興については、Horwich (2000) が以下のように述べています。

「全てではないにせよ、多くのメディアでは復興には10年の歳月がいるだろうと言われた。しかし、15ヶ月も立たないうちに神戸周辺の製造業の生産は震災前の98%にまで回復し、18ヶ月目にはデパートの79%が営業を再開している。このときの震災前との売上比は76%である。1年後、港湾施設の半分がまだ使用できなかったが、輸入量は同等レベルまで回復し、輸出量は85%にまで上昇した。(略)2年後には全ての瓦礫が街中から取り除かれた。これは驚くべき成果だ。」

国でも自治体レベルでも復興計画が作られ、3年で震災で毀損した設備と同等量が回復されました。

Kobe2
クリックすると拡大します

なお、誤解をしていただきたくないので2点指摘しておきます。

ひとつは公的支援によって全ての損失が賄われたわけではないということです。「震災後の暮らしの変化から見た消費構造についての調査」(兵庫県 1997)によれば、世帯の80.3%が震災によって余計に必要となった費用があったと答えており、33.9%が震災後に所得が減少したと答えています。兵庫県の地震保険の加入率はわずか3%でした(山口 1999)。被災した多くの家庭は貯蓄を取り崩すか、消費を切り詰めることによって対応しています。

もうひとつ、この復興需要の恩恵は一律にもたらされたわけではありません。建設業は特需に沸いたかもしれませんが、サービス業は消費の落ち込みで深刻な打撃を受けたことでしょう。経営基盤の弱い中小企業は資金繰りが苦しくなればすぐに倒産です。不況でも震災でもそうですが、このような逆境に苦しむのは経済力の弱い人達からです

もちろん全てが元通りというわけにはいかず、震災の影響がひどかった地域では今も人口が震災前のレベルには回復しておりません。これは、元々被害の大きかった地域にはお年寄りが多く戦前からの木造住宅も多かったため、震災をきっかけに若年層が流出した結果ではないかといわれています。

Table1
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今回の東日本地震の考察ですが、3月23日に発表された政府の推計はこの阪神大震災のケースをベースにしています。次回はこの資料について考えてみたいと思います。

(続く)

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