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2011.06.08

風力発電メモ

※ご指摘をうけて修正しました。

原発事故以来、再生可能エネルギーについてちょこまかと調べていたので、今回は風力発電についてメモ程度に書き留めてみたいと思います。例によって素人の雑感なので間違っている箇所はご指摘いただけると助かります。

Middelgrunden3

1.風を電気に変える

発電のためにはなんらかのエネルギーを電気に変える必要があります。火力だったらガス、石炭、石油など。水力は水の位置エネルギー、原子力だったらウラン。風力はもちろん風です。

ですが、利用可能なエネルギーを全部電気に変えることは出来ません。例えば風力のエネルギー変換効率が仮に100%だとすると風力発電機を通った瞬間に一切の風が止まるということを意味し、これは現実にはありえません。

で、発電量の計算式としては下記のようになります。

 発電量 = エネルギー密度 × 変換効率 × 稼働率

エネルギー密度:
そもそも物質が持っているエネルギー量

変換効率:
エネルギー量のうち何%を電気に変えられるか。最新の石炭火力発電ですと50%に達し、太陽光発電は10%~20%、風力発電は20%~40%といわれています。

稼働率:
発電設備の使用可能率です。例えば日本の原子力発電所の場合は定期点検が必要なので稼働率は60%ぐらいです。太陽光発電は曇ってたら使えませんし、風力発電は風がとまっていたり、逆に強すぎたりすると使えません。風力発電の稼働率は20%程度と言われています。

さて、これをベースに考えてみましょう。

2.風力のエネルギー密度

そもそもの疑問は「風ってどのくらいのエネルギーがあるのか?」ということになると思います。もちろん風の強さに依存するのですが、計算式(風力エネルギー密度 = 1.9 × 1/2 × 空気密度 × ( 年平均風速 )3)があり、日本の平均風速は4m/sぐらいなので、エネルギー量は約40w/m2となります。1メートル四方で電球一個分ですね。

もちろん風力発電には風が強く風向が安定したところが選ばれます。仮に8m/sとすれば、エネルギー密度は 313W/m2となります。なお、太陽光は晴天時で1kw/m2エネルギー密度です。化石燃料などと比べると風力、太陽光はそもそも持っているエネルギー量が極めて少ないのです。

Dig_01
出所: (社)日本電気技術者協会

風力が2倍になるとエネルギー量は8倍になります。中学校でやる3次関数です。下の図は参考までに日本の平均風速。山間部は高くなります。

Dig_02
出所: 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 1993年

3.再生可能エネルギーは土地問題

持っているエネルギー量が少ないならば、解決策は発電設備を死ぬほどたててエネルギーをかき集めるしかありません。火力発電所や原子力発電所は一基あたり100万kWの出力があります。

仮に風力発電で100万kWの出力を出す場合にどれくらいの土地が必要になるかといいますと、

エネルギー密度:300W/m2
変換効率:30%
稼働率:20%

でそれぞれ計算した場合、約5555万/m2の土地が必要になり、これは山手線の内側6300万/m2 に匹敵することになります。福島第一原発の6号炉までの発電量(548万kW、稼働率60%想定)を風力発電でまかなおうとすると、大体下記の面積が必要になります。神奈川県の半分を風車で埋め尽くす、といった感じでしょうか。

Furyoku_2

被災地の仮設住宅用の土地の確保で苦労していることからも分かるように、土地の確保は難題です。

徳島県が面白い資料を出しておりまして、上の地図は県内の理論的な風力のエネルギー量。下の地図は自然保護区などを除き、さらに送電線や輸送路などのインフラ関係の問題を考慮して現実的に利用可能なエネルギー量です。ぶっちゃけほとんど利用可能な場所ありませんね。

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出所: 徳島県 「「緑の分権改革」推進事業 クリーンエネルギー賦存量・利用可能量調査結果」 2011年4月 

仮に日本で大規模なウィンドファームを設置するとしたら、漁業権との兼ね合いはあるものの、恐らく洋上しか候補はないでしょう。

4.技術的イノベーションは起こりうるか

最後に技術的な可能性について考えてみたいと思います。もちろん、現時点の技術的な予測などはあてにならないことは歴史が証明していますが、ま、思考実験として。

もう一度はじめの式に戻りますと、

 発電量 = エネルギー密度 × 変換効率 × 稼働率

まず風のエネルギー密度は変えられないので、変換効率をあげるか、稼働率をあげるしかありません。しかし、現在の技術で変換効率は結構いいところまで来ています。

Dig_03
出所: (社)日本電気技術者協会
※実際には伝導系(95%)と発電機(90%)でさらにエネルギーロスが起こる

稼働率の問題は、原発や火力のような点検の問題ではなく、そもそも風が強かったり弱かったりすることが原因なので、こちらの大幅な向上もなかなか難しいでしょう。もちろん耐久性等があがれば稼働率は向上しますが。

Dig_05
出所: (社)日本電気技術者協会

とまぁ、そういうことなので風力発電に可能性があるとしたら、風車そのものよりも洋上施設の技術革新とかかな・・・なーんて僕は思っております。いずれにしても大規模なエリアの確保が難しい現状では、風力発電は補完的な役割に留まるでしょう。

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コメント

大変よく調査されていることに、敬服の至りです。内容を読ませていただきますと、若干気になる点(稼働率、変換効率)が有ります。
●原子力稼働率:50%程度と記載されていますが、ベース電源として13ヶ月連続運転⇒定検のため、平均的には、80%程度。
●風力の変換効率と稼働率:変換効率は、70~80%程度、稼働率は、20%程度でしょう。
●再生可能エネルギー:同エネルギーは、全体の8%程度。この内、水力が75%有ります。水力も国内では、ほぼ全て開発済みではないでしょうか。太陽光も変換効率は、技術の進歩でUpすると思う。しかし、日照時間は、制御が不可能で不安定電源でしかないと思います。ただ、無人の中継所、灯台、個人の家庭etcは、BTとの組み合わせで利用は可能です。
大変失礼なことを記しましたが、元電気技術者として、悪しからずお許し下さい。

投稿: k--k | 2011.06.09 08時17分

ご指摘ありがとうございます。

原子力の稼働率80%というのは理論値ではないでしょうか?経産省の資料によると実績値は60%のようです。一応60%にしておきました。

http://www.meti.go.jp/press/20090417004/20090417004.pdf

風力の変換効率が80%というのは出所はどちらでしょうか?引用元の他、NEDOのHPでも変換効率は30~40%となっています。

http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/neg/neg03/index.html#elmtop

おっしゃるように再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しいと思います。太陽光発電の方がエリア確保(家屋の屋上)の可能性が相対的にあるかなぁ、ぐらいに思っています。


投稿: Shuji | 2011.06.09 09時51分

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