« 為替介入の有効性 1 | トップページ | 為替介入の有効性 3 »

2011.11.06

為替介入の有効性 2

前回の続きであります。

2.為替介入の目的

既存文献のご紹介の前に、「為替介入の目的」ということに一言触れたいと思います。そもそも為替介入の目的は「為替レートを目標値に固定すること」ではなく「為替レートの過度な変動を抑える」ことにあります。図で表すとこういうことです。

Graph7_2

Graph8

上の図は今まさに中国や現在のスイス中銀がやっていることですが、「自由な通貨移動」つまり変動相場制を維持する限り、こうなることはありえません。下の図のようにあんまり派手にレートが動くようだったら、ちょっとそれをスムーズにしよう、というのが日本の為替介入なのです。建前上の目的は。

しかし、後者の目的を達するためには「為替レートの適正水準はここにある」という”見極め”が必要になります。逆にそれがないと、介入自体が市場の撹乱要因になってしまって、目的を達するどころか、市場の変動幅をさらに大きくするという、本末転倒な事態が起こってしまいます。

3.既存文献

さて、それでは論文等のご紹介に行きます。といっても経済学徒でもない私が適当にネットで拾ってきただけなので、どれぐらい権威があるのか分かりません。その点はご了承下さい。

とりあえずHillebrand and Schnabl (2003) には、以下のようにまとめられています。


Juergensenレポート(1983)より、不胎化介入が一定の為替レートへの誘導を実現できるのか、為替介入の有効性については広範な議論が行われてきた…

過去においてはDominguez and Frankel (1993)、最近においては Mamaswamy and Samiei (2000) の論文が、日本の為替介入は”部分的に成功であった”と結論づけている。どのようなメカニズムかについて明らかにしていないものの、Ito (2002) の研究よれば”Mr.円”と呼ばれた榊原財務官のもとで、為替介入は一定の目的を達したとみられている。Beine and Szafarz (2003) は、様々なGARCHモデル推定によって特にアメリカと共同歩調をとったときに有効であったと結論づけている…

一方で、Sarno and Taylor (2001) は、少なくとも主要先進国間では資本市場は統合が進み金融資産の代替性も高まっているため、不胎化介入の効果はないと主張した。Dominzuez(1998) は不胎化介入は国内のマネーサプライが変わらないのだから、定義上成功するはずがないと断じた…

ボラティリティ(変動)に与える影響についても議論が行われてきた。Dominguez (1998) は効率的な外為市場でも信頼性が高く簡明な不胎化介入はボラティリティを低減すると主張した。DeGrauwe and Grimaldi (2003) によればシステマティックな不胎化介入は投機家の”チャート主義”によるノイズを減らすとしている…

一方で、Schwartz (1996) は政府による介入は不確実性を高めてボラティリティを高めると主張してきた。Bonser-Neal and Tanner (1996) はオプションプライスを使うことによって、介入がボラティリティを高めたと結論づけている。…Watanabe and Haraguchi (2001) によれば、GARCHモデルによる推計によって、1990-2000の為替介入は短期的には大きな効果があったが、長期的にはなんら影響を与えなかったとしている。

結論として、最近の実証的な研究は為替介入の効果について支持するものが多いように見受けられるものの、確たる結論は出ていない。…最近の日本の金融当局の頻繁な介入はある程度の効果があることを示唆している。完全な失敗であればこれほど頻繁に行われることはないだろうと思われるからである。しかし、同時に介入効果が長続きしないことの証左ともいえよう。


そりゃそうだよな、といったところでしょうか。当たり前と言えば当たり前ですが、やはりグラフをみての直感的な結論とそれほど差異がないことが確認できます。

またまた長くなってしまったので、今度はこのような人為的な介入が引き起こす副作用について触れていきたいと思います。

|

« 為替介入の有効性 1 | トップページ | 為替介入の有効性 3 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/536885/53176517

この記事へのトラックバック一覧です: 為替介入の有効性 2:

« 為替介入の有効性 1 | トップページ | 為替介入の有効性 3 »