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2011.11.07

為替介入の有効性 3

えー、前回まで果たして為替介入の効果があるのかないのかを見てきましたが、今回は為替介入が引き起こす副作用についてみてみたいと思います。

4.外貨準備高の急増

さて、為替介入とは具体的には国内で借金をして、米国債を買うことを意味します(米ドル買い介入の場合)。必然的に介入を行うと政府の外貨準備高は積み上がっていきます。

Graph5
出所: 「日本の長期統計系列」総務省統計局、 「外貨準備等の状況」財務省

日本の外貨準備高は1兆2000億ドルに達し、邦貨にして100兆円近くあることが分かります。まぁ、政府の外貨預金がこれぐらいある、という理解でいいでしょう。で、当然のことながら1990年代後半から2000年代前半にかけて、外貨準備高が急増している事がわかります。

ちなみに為替介入を行わなかった2004~2009年にも外貨準備高が増えてますが、これは利回り(長期の米国債は4%程度の利率があるので、5年で20%以上増える)と、FRBによる金利低下における時価評価額の増大によるものです(債券価格は利回りが低下すると価格があがる)。

この巨額の外貨準備が意味することは何か。皆さんが巨額の外貨預金を保有していると考えれば理解しやすいでしょう。つまり、多大なる為替リスクを背負っているのです。円高に触れると、政府の資産はガンガン目減りしていきます。ドルが暴落したりしたら目もあてられません。その損失は当然最終的には税金で穴埋めが為されることになります。

5.対外関係の悪化

さて、この為替介入の主目的はどう言い繕っても「輸出品の価格を下げて外国で日本製品を売る」ことにあり、いわゆる近隣窮乏化政策です。従いまして、これを派手にやると当然諸外国からの反発を受けることになります。近年最も為替レートをめぐる対立が先鋭化しているのは、言うまでもなく中国とアメリカであります。

では、日本の介入はどうなのか?しかし、我々がこれまで見てきたようにこの程度での介入では巨大な為替市場に明確なインパクトを与えることは難しいのが現状です。皮肉なことに、効果が大してないからこそ大きな問題になっていない、と言えるのです。

それでも、一応注目してくる人達はいるようでして、アメリカ議会の委員会に提出されたレポート(PDF) (2007) があります。それが面白いのでご紹介させてください。


日本の為替介入は為替市場を操作し、不公正な輸出上のアドバンテージを得ようしている、という非難を巻き起こしてきた。…過去には日本は積極的に為替介入を行なってきたが、2004年3月からその形跡はみられない。…過去の為替介入は極めて短期間の効果しかなく、円高のスピードをほんの少しだけ和らげただけであろう、というのが大勢の意見だ。

これまでの円の適正価格に関する各種推計によれば、円が割安評価されている幅は3,4円~20円となっている。ただし、その円の過小評価がどれほど為替介入の累積効果によるものか、市場のマーケット参加者によるものかは分からない。…2006年に米国財務省は日本は為替操作国とは言えないと結論し、IMFも同様に日本の為替操作を認めなかった。ただし、何をもって為替操作国とするかの基準にはかなりの裁量の余地がある。…

議会が取る主要な政策手段は

  1. 何もしない
  2. 為替操作の定義を明確にする
  3. 交渉と報告を求める
  4. 大統領に為替操作をしている国を特定し、是正をするように要請する
  5. WTOもしくはIMFに提訴する
  6. IMFにおいて日本を利するあらゆる政策変更に反対する

このレポートは中身も結構冷静で「そもそも円が10~20%も過小評価されているという主張はアメリカの自動車業界によって誇張されてきたものである」「為替の”適正価格”を算出する普遍的方法論は確立されていない、という根本的な問題がある」「為替レートが変わったからといって、それが日本の輸出拡大に直ちに結びつくわけではない」ということが指摘されています。

ただ、同時に「日本の報告、統計データが完全に正しいかということについては疑義がある」という具合に、根底にあるのは日本に対する不信感なんだろうな、ということが分かります。そうでなければこんなレポートでてこないでしょうし。まぁ、昨今のTPPにまつわるアメリカ悪玉論をみてると、お互い様なんでしょうけどね。

何はともあれ、日本政府の為替介入はこういった攻撃の端緒となるということでしょう。

6.結論

ということで、為替介入の有効性については「効果がないとは言えないけど、極めて短期的なもの」というあたりが大まかな結論としてよいのではないでしょうか。

個人的には労多くして益少なしという印象を持っています。既述の副作用を考えると、ただ単に産業界へのエクスキューズとしてやることは国益にもとると思うのですが・・・。なかなかそういう理解は得られないですね。

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