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2012.05.01

書評:政治主導の教訓

「政治主導」の教訓: 政権交代は何をもたらしたのか

帯に大きく「なぜこんなことになったのか?」というコピーが。民主党政権の誕生から現在の状況を知る同時代人ならば、深く頷く”問”ではないでしょうか。

本書は御厨氏の薫陶を受けた12人(研究者、現役官僚等)の共著です。帯のコピーは出版社がつけたんでしょうけど、キャッチーなのでこの”問”に対して本書がどう答えているのか、という視点で見てみます。

第一部「政治構造の変容」

・内閣支持率が乱高下するのは何も民主党に限ったことではない。
・その原因のひとつは多党制を指向する選挙制度と二大政党を指向する選挙制度が混ざっていることにある。
・その他にも政党の凝集性が高まるようなシステムになっていない。
※以上第一章

・いわゆる「地方」(首長や個々の議員)は中央政界にそれなりに影響力があり、そこにも様々な利害関係があるので中央政界もこれに配慮して極端な改革案は打ち出しにくい。
※以上第三章

てな状況が解説されています。つまり民主党がグダグダになったのには制度的な問題があり、民主党であれ◯☓党であれ、今の日本ではひとつの方向性を示して大胆な改革をするのはなかなか難しい、ということになります。

第二部「政治主導の現場」

敢えて簡略化すると民主党が「脱官僚」というイデオロギーにこだわりすぎて、官僚と適切な関係を築くことに失敗したと(本文はそんな乱暴な論じゃないのでご関心のある方はお読みください)あります。

こうなると民主党固有の問題ですね。

第三部「政治主導の論点」

ここでは多様な論点が挙げられています。

ひとつは大山礼子氏の「日本の国会」で語られている、”与党”と”政府”の距離感の問題です。自民党は族議員を始めとして、党のなかに利害調整機能をもった。民主党はそれを否定しようとして、政府に一元化しようとしたが、そうすると与党が無用の長物になってしまった・・・とか。

民主党政権の目玉であった、「事業仕分け」は注目をあびた手法ではあるが、制度的な存在意義を考えるとクエスチョンであることも指摘されています。つまり、単に予算査定であれば政府内部でやれば良くて、公開裁判は必ずしも必要ない。一方で政治的イシューの論点だしとしての意義はあった、等。

概ね民主党の経験不足からくる種々の問題が指摘されております。


では初めに戻って、「なぜこんなことになったのか?」についてはやはり「制度的な問題(誰がやっても発生した問題)」と「固有の問題(民主党でなければ発生しなかった問題)」が存在し、今件に関してはそのミックスであった、というのが本書で語られていることです。

第二部、第三部で指摘されている「民主党固有の問題」は、経験を積むにつれて今後改善されていくことが期待されます。とはいっても、従来型の利益調整システムが機能しない(最大の問題は配分原資が細っている)以上、単なる復古主義ではなく新しい知恵が求められています。ここは各政党が各々創意工夫すべきところでしょう。

しかし、第一部の問題は制度的要因に根ざす根深い問題です。そう簡単に選挙制度が全面的に変わるわけでも、地方と中央の関係が変わるわけでもありません。まぁ、それはそれで我々の肌感覚にも合うような気がしますけど(いわゆる「誰がやっても変わらない」という問題。ちょっと一般に使われるのとはニュアンスが違いますが)。

制度的問題に関して現時点でまず必要なことは、この本のように「こういう問題がある」と可視化することだと思われます。

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